私たち国鉄労働組合は、7月25日~26日、新橋交通ビルにおいて第93回定期全国大会を開催し、組織強化・拡大運動の総括、JR及びグループ・関連会社における労働条件改善と非正規労働者の正社員化ならびに処遇改善、安全・安定輸送の確立、効率化優先の合理化施策反対、ローカル線をはじめとする地方公共交通の維持・活性化、そして2025年春闘における大幅賃上げ獲得に向け、全力をあげて闘い抜く決意を固め合い、向こう1年間の運動方針を確立した。

 本大会は「組織強化・拡大に向けた具体的な運動の展開」を全職場から強めると共に「5年ビジョン」の総括から、今後の国労を担う次世代へ「組織・運動・財政」を継承・発展させるために組織全体で議論と意思統一を深めることを確認した。

 去る6月23日に閉会した第213回通常国会では、自民党派閥による政治資金パーティーをめぐる裏金問題に国民の厳しい目が向けられるなかで、経済安保情報保護法の制定、自衛隊法や出入国管理法の改悪、さらには共同親権をめぐる民法改正など、多くの問題法案が審議不十分なまま数の力によって強行成立した。

 岸田首相の「政治への不信感を払拭する」との意気込みとは裏腹に「政治資金規正法改正」は、野党が求めた企業・団体献金の禁止は行わず、政治資金を監視する第三者機関の具体像も不明なまま先送りされた。積み残された課題は、今後の与野党協議に委ねられたが、議論の場さえ決まらず、真相究明はなされないままであり、「国会が閉会すればこの問題は終わる」といわんばかりに幕引きをはかろうとしている自民党に対して国民の不信感はかつてないほど高まっている。

 こうした状況で行われた4月28日投開票の衆議院補欠選挙では、3議席とも自民党が立憲民主党に敗れる結果となり、7月7日投開票の東京都議補欠選挙においても、2勝6敗と自民党への国民の不満が明らかとなった。

 一方、東日本大震災と東京電力・福島第一原発事故から13年が経過し、昨年8月24日、漁業関係者の反対の声を押し切り、「ALPS処理水」が放出されたが、長期にわたる海洋放出が生態系に及ぼす影響など納得のいく説明はされず、溶融燃料の取り出し、「核のゴミ」の処理などの問題も未だに解決の目途が立っていない。改めて福島県民・漁業者の反対の声に耳を傾け、全ての人が納得できる解決策を強く求めるものである。

 JR福知山線及び羽越本線での脱線事故から19年が経過する一方で、事故の教訓は何ら生かされず、JR各社とも更なる効率化や要員削減が行われ、安全輸送の根幹が大きく脅かされている。昨年8月、JR東日本の大船駅構内で走行中の電車が、傾いた電化柱と衝突し、乗客と運転士が負傷する事故が発生した。今年1月には重鍾ロッドが破断した架線トラブルによる停電と復旧作業に伴う感電事故により、東北・上越・北陸新幹線が朝10時から終日全面運休する大規模輸送障害が発生している。西日本では近江塩津駅構内で架線設備の点検作業中にグループ会社社員が感電し、約5メートルの高さから転落死亡する痛ましい死亡労働災害が発生した。さらに東海でも7月22日に保守車両が衝突・脱線し、東海道新幹線が終日運転を取り止め、一昨日にはJR新山口駅構内で貨物列車が脱線するなどJR及びグループ・関連会社を問わず重大なインシデントやトラブル、労働災害は後を絶たず、労働者の安全が脅かされ、健康や命までもが奪われる事態となっている。

 国労は、交通運輸に携わる労働組合として、公共交通機関であるJRの社会的責任の履行やコンプライアンス遵守に向けて、労働災害・事故防止対策の取り組みに全力をあげることが求められている。そのためにも、利用者や地域住民の視点に立ち、交通運輸に結集する全ての仲間と連帯し、「安全・安定輸送の確立」「誰もが安心して安全に働ける職場づくり」をめざす運動を強化しなければならない。

 ローカル線問題は、昨年法制化された地域公共交通活性化再生法改正法により新たな段階を迎え、JR各社の路線別の収支や輸送人員数が相次いで公表される中、西日本・芸備線の一部区間に対して「再構築協議会」が設置された。鉄道路線維持のための公的資金支援制度の拡充や地域公共交通を守る立場から持続的な安定経営の確立を強く求めていくことが重要である。

 JR各社の昨年度決算は回復へと向かい、貨物会社を除くJR各社は黒字決算へと転換した。これを背景に24春闘では各社とも定期昇給の完全実施と有額ベア回答を勝ち取り、夏季手当では貨物会社を除く各社とも増額の結果となった。しかし、賃上げが物価上昇に追いつかない今日の状況は変わらず、生活に困窮する労働者・家族の不満と怒りの声が寄せられている。加えて、コロナ禍を理由に施策の先取りや一層の効率化を推し進めるJR及びグループ・関連会社の労働条件改善は喫緊の課題でもあり「同一労働同一賃金」の確立と真の働き方改革を実現させるべく格差是正に向け全力をあげなければならない。

 国労は「組織強化・拡大の具体的な運動の展開」を職場から実践し、組織拡大運動を全ての闘いの集約点として全力で取り組んできた。職場からの取り組みにより仲間の信頼や共感を生み出してきたことに自信と確信を持ち、各エリア・地方から積み上げてきた成果や教訓に学び、不退転の決意で組織拡大に取り組むことが求められている。結成から78年の長い歴史と伝統を持つ労働組合として、闘いを構築し、職場の仲間と共に全組織が一丸となって取り組むこととする。

 右、宣言する。 

2024年7月26日 国鉄労働組合 第93回定期全国大会