第190回拡大中央委員会にご参集いただいたすべての仲間の皆さん、大変ご苦労さまです。中央執行委員長の松川です。中央執行委員会を代表して一言ご挨拶申し上げます。

 昨年を振り返ってみると、自然災害が多発し、九州地方や関東地方を中心に甚大な被害となりました。台風の影響で家屋や電気・水道などの生活インフラにも大きな影響が出て、被災された組合員も多数に及びました。また、JR関連施設でも、長野新幹線車両センターは復旧を進めているものの本復旧まではかなりの時間を要する見込みで、吾妻線、水郡線などは運転再開のめどが立っていません。一連の自然災害において被災された関係者と、その中にあっても鉄路を守り復旧に腐心された組合員に対し、感謝とお見舞いを申し上げます。

 本部は、この自然災害に対して緊急カンパを取り組み、被災した組合員を中心に義援金を届けてきました。厳しい生活実態の中からカンパをいただいたことに対し改めて感謝を申し上げます。

 第190回拡大中央委員会に課せられた課題について、以下4点について触れたいと思います。

 一点目は、国労の最重要課題である組織・強化拡大についてです。

 本部は、昨年の大会で「国労の課題と方向性.今後5年を見据えた組織並びに運動展開」を提起し、様々な議論をいただき、現在初年度を迎えています。今後5年間の組織・財政の推移を分析して運動提起したわけですが、国労運動の継承とさらなる発展のために基本となるのは、組織拡大が必須の課題であるということです。次代を担う仲間の育成と拡大を一体のものと捉えた運動展開が必要であり、国労総体で取り組むべき課題です。さらに、5年後を見据えた組織体制の整備にも着手しなければいけません。次世代を中心とした組織的な議論を行い、より良い体制の確立が急務です。

 この間、「組織拡大・全国統一行動」を提起して取り組みを強化してきました が、若手の拡大が続いているなど一定程度の成果をつかんでいます。中央委員会までの第一次ゾーンを総括し、5月までの第二次ゾーンにつなげ、新入社員対策を含めた組織拡大運動の展開につなげていかなければなりません。

 特にJR東日本におけるJR東労組の瓦解という現状において、労働組合とは何かが改めて問われています。「職場において労働組合の必要性を感じない社員が多くなり、未加入状態の継続になっている」といわれています。これは、労働組合の必要性が実感できる運動に接してこなかった証であり、今こそ労働組合の必要性、国労運動の正しさを訴えて、組織拡大につなげていかなければいけません。日々の労働条件や36協定など、未加入や他労組の仲間の身近な職場の課題から取り組む運動を展開することが重要です。

 あらためて、組織拡大の重要性を国労組織総体で確認し、取り組みに全力を挙げることとします。

 二点目は、JRの安全・安定輸送の確立についてです。

 日本の総人口は、2008年をピークに減少し、生産年齢人口は1995年をピークにすでに減少しています。行政機関の想定では、生産年齢人口は20年後に約1,500万人減、40年後に約3,000万人減少するとしています。一方で実際働いている労働力人口は、2018年まで6年連続で増えています。これは、女性や高齢者の社会進出などによるもので、「働き方改革」の功罪もここに現れているといえます。しかし、このような状態が進んでいくと大都市への一極集中化の傾向が益々強まり、地方の過疎化は一段と進むことになります。このような状況を見越して、JR各社は様々な施策を打ち出してきています。

 併せてJRでは、国鉄世代が退職期を迎え急激な世代交代が進み、技術継承が大きな課題となっています。しかし、若手を教育しようにも「職場は要員が逼迫し教育どころではない」という現状に置かれています。足りなくなる労働力を補うために近年ではAIの活用や自動化が進められており、自動運転も実証事件に入っています。

 このような現状における会社施策すべてに反対するつもりはありません。しかしどのような施策が提案されようとも、JRの安全・安定輸送は、譲れるものではありません。鉄道事業の根幹である安全を蔑ろにした事業経営はあり得ません。さらに、日夜安全・安定輸送をつかさどっているのは社員です。安全・安定輸送を確立し、技術継承を行うことのできる適正要員の配置と安全に安心して働くことのできる労働条件の確保は重要な課題です。ここに労働組合の存在意義があることを共通認識としたいと思います。

 阪神淡路大震災から25年が経過し、東日本大震災から9年が経とうとしています。近年も大阪北部や北海道胆振東部で大きな地震があり、生活やインフラ被害が伴いました。さらに激甚化する自然災害が多発しています。そのたびに、鉄道関連施設は復旧に時間がかかり、復旧か廃線かの議論にもなっています。しかし、地方の人口減少と併せて鉄道の廃線となると地域生活は破壊されてしまいます。JRの路線は、民間会社になったといえども公共交通路線です。儲かるとか儲からないだけで、経営を論じるべきではありません。会社は当然ですが、国や自治体のバックアップを得ながら、生活の支えとなる地域交通を確保しなければいけません。本部は、11月に国土交通省要請を行いましたが、3月に改めて国会議員や主要政党への要請行動を行って、国労の考えを訴えていくこととします。

 三点目は、2020年春闘についてです。

 1月20日に開幕した第201通常国会で安倍首相は、「この7年間で日本経済は13%成長した」と声高に演説しました。しかし異次元的金融緩和や法人税の減税などにより、市場に供給された大量の資金は企業に貯め込まれ、国民には届いていません。それどころか、労働分配率の低下や消費増税、医療費負担の増加などにより、生活は一向に改善していません。結果として、大企業は空前の利益を上げる一方で、賃金は上昇せず貧困と格差はますます拡大しています。これが、アベノミクスにおける経済成長なのです。

 安倍首相は、7年連続となる官製春闘を主導し経営側に賃上げを求めました。受ける形となった経団連は、1月21日に経営労働政策特別委員会報告を発表し、ベア自体は「選択肢になり得る」としながらも、19年に引き続き具体的な数値を示しませんでした。さらに、賃上げは「各社一律ではなく、自社の実情に応じて前向きに検討していくことが基本」と強調しました。したがって、安倍首相の要請に答える春闘は、もはや終焉したといえます。

 国労の2020年春闘における賃上げ要求は、定期昇給の完全実施と基本給(平均)の4%相当額、11,000円を基本とするベースアップを求めることとし、2月12日にJR各社一斉に申し入れることを提起しています。国労はJR各社と多様なグループ会社で働く組合員で構成しています。春闘においては、置かれた状況の違いはありながらも、組合員の生活向上や労働条件改善などの負託に応えた闘いが求められています。したがって今年から回答ゾーンの設定や夏季・年末手当の年間要求月数も中央委員会で提示し基本的な考えを示すこととしました。各エリア本部の置かれた条件の違いを乗り越えて、同じ方向を向いた統一闘争として2020年春闘を構築していくことと致します。

 この要求を勝ち取るために、賃金交渉を中心的に担うエリア本部を支える体制を職場からつくる必要があります。春闘は、賃金交渉を行う人が作るのではなく、交渉を支える組合員の力が重要です。したがって、今春闘においても職場からの春闘構築を目指します。安全・仕事総点検運動の実践から、他労組や未加入者の意見も取り込んだ職場改善、労働条件改善要求を確立し、職場から改善を求める運動を展開することを提起しています。職場の取り組みと賃金交渉が連携する春闘を構築することで、組織拡大の取り組みにもつながります。

 さらに大衆行動として、3・3国労中央総行動を行います。今年も、学習会の要素を取り込んで、次代を担う青女家行動委員会と共に成功させたいと思います。青年・女性・家族は、すでに青女家行動委員会を立ち上げており、中央総行動の準備に入っていますが、取り組みのためのカンパをお願いしていますので、全国からのご協力をお願いします。

 4点目は、政治的な課題です。

 通常国会の施政方針演説で安倍首相は、やりたい政策については報告したものの、「桜を見る会」やカジノ汚職、連続する閣僚の辞任など政治不信に対する説明も反省も語ることはありませんでした。安倍政権は、憲政史上最長通算在職日数を更新しましたが、権力の私物化や閣僚の任命責任のあいまいさ、国会議員としての説明責任の放棄など長期政権のほころびが明らかです。

 また、国会審議に諮ることなく閣議決定のみで、自衛隊を中東地域へ派遣するなど、「戦争のできる国」への準備を着々と進めています。この行き着く先は、安倍政権下での改憲であることは明らかです。憲法改悪を許さない運動の展開に向けた連帯が今以上に求められています。

 来年10月の任期満了を待たずに解散総選挙となることは間違いないだろうと思いますので、安倍政権が招いた政治の劣化や民主主義の破壊をこれ以上許すわけにはいきません。安倍政権に終止符を打つため、野党が結集した闘いに国労としても全力を挙げることとします。

 以上4点の中心的な課題について述べましたが、課題はこのほかにも山積しています。これから迎える春闘の闘いから、新入社員対策などの組織拡大の取り組みを中心に、次期全国大会まで全力を挙げる決意を申し上げて中央執行委員会を代表してのご挨拶といたします。