国労第191回拡大中央委員会 委員長あいさつ(抜粋)

2021年春闘、
組織拡大を中心に次期全国大会まで全力を挙げる

仲間の拡大をすることこそが私たちの責務

 第191回拡大中央委員会にご参集いただいたすべての仲間の皆さん、大変ご苦労さまです。中央執行委員長の松川です。中央執行委員会を代表して一言ご挨拶申し上げます。

 コロナと政治に振り回された1年でしたが、動きが制限される中でも昨年度は20名の組織拡大を頂きました。国労の最重要課題である組織強化・拡大に触れたいと思います。

 国労は組織の拡大を最重要課題として提起してきましたが、今一度原点に立ち返る必要があります。いま国鉄労働組合にいる組合員は、熾烈な国鉄分割・民営化反対闘争を乗り越えて国労を守り、JR世代が戦列に加わって頂きました。みんな国労に愛着を持ち結集しています。

 しかし、JR発足34年が経過しその思いだけでは組織を維持することはできなくなっています。労働組合は、資本家からの搾取に抗して、立場の弱い労働者が集まって結成されたものです。したがって組合員数が大きいほど影響力を増し、数が減少すれば影響力を失い、いくら理論が正しくても、愛着が強くても組織の存続は難しくなってきます。そのことを踏まえて組織拡大を最重課題として提起してきたのです。

 皆さん、もう一度この原点に立ち返り、全国から組織拡大運動に決起しようではありませんか。次世代に運動の継承を託すだけではなく、仲間の拡大をすることこそが私たちの責務であることをあらためて確認したいと思います。そして、JR採用の次世代の皆さんも、自らのこととして組織拡大運動の先頭に立って頂きたいことを訴えたいと思います。

 国労が2012年に発出した闘争指令第1号については、8年が経過し、国労を取り巻く情勢と組織事情も大きく変化していることから、本部としての8年間の総括を提起いたします。組織拡大の意義は、先ほど述べた通りですが、各機関が個々の取り組みとして行っていたものを闘争指令によって国労の中心課題として、全国統一闘争として展開できたことは大きな成果です。組織拡大の数もさることながら運動の前進としてとらえた総括が求められていると思います。それが大きな成果とすると、課題は何かです。拡大のあり方は機関によってかなりのばらつきがあります。なぜ拡大に至らなかったのか、さらに拡大するためには何が必要なのか、もっと掘り下げた総括を全機関で行うことによって、新たな方針が確立されます。

 これ以降、エリア・地方、さらには分会に至る、国労全機関が闘争指令第1号の総括運動を行い、概ね6月頃に集約を行い、全機関の成果と課題を明らかにし、次期大会に新たな組織拡大方針を提起したいと思います。2021年度後半の取り組みの集中点として展開したいと考えます。組織拡大は待ったなしの課題です。国労運動の継承と発展に向け全力を挙げることといたします。

社員が安心して安全に働けない会社に、安全・安定輸送は築けない

 2点目は、JRの経営と安全・安定輸送の確立についてです。

 コロナ禍において、人流・物流が大きく変化し、また人々の生活や働き方も変わりました。結果としてJR旅客6社の収支は、大きく落ち込み今年の3月期決算では大幅赤字が予想されています。全社とも収入はコロナ前には戻らないことを前提に施策を打ち出しています。運輸業は頭打ちであることから、非運輸業に注力していくとして、JR各社、言い方は違いますが、総じて「鉄道事業のスリム化」「事業の見直し」などに取り組むとしています。JR発足以来、効率化、合理的、委託などで本体のスリム化がすすめられ、JR発足時には全社で約20万人いた社員数は、現在12万人を切る状況で58%程の体制になっています。これは本体の社員数ですから連結社員数となれば数も変わりますが、かなりの要員減であることは間違いありませんし、今後コロナ禍でスリム化が更に加速していくことを警戒する必要があります。

 私は、コロナ禍において学ぶことがあると思っています。これまで国や自治体が維持してきた公立病院は、採算性が悪いとか予算がないなどで統廃合や民営化を進め、保健所も同様にかなりのスリム化を図ってきました。その結果、全国的にコロナが広まった時、病床不足、看護師不足、保健所対応不能となる状態にまでなってしまいました。病院や保健所は、人の命を預かる最重要の砦です。先を見つめ、無駄に見えたとしても、何かがあった時に対応できる対応力を維持し、病気や事故、災害に備えることが必要であると感じました。コロナが想定外というなら、そんな無責任な言い訳は通用しません。行政の大きな誤りであると思います。

 企業が成長するための効率化、合理化はすべて否定するものではありませんが、本当に正しいのか、本当に無駄なのか考えないといけません。会社は、「異常時を想定した、要員配置はできない」とよく言います。しかし、毎日数千万人の命を運んでいるJR各社が「これは異常時、想定外」で済むのでしょうか。アフターコロナの経営において、JR各社は筋肉質な経営を標榜していますが、筋肉質の体は必ずしも強靭ではなく、筋肉を守る贅肉は必要なものであることを知るべきです。公共交通とは何かを経営側はよく考えてほしいし、国労としても大きな課題として考えたいと思います。

 昨年12月に国交省は、JR北海道、四国、貨物三社に対する、法律に基づく財政支援策の継続を決定しました。かねてから国労も、国交省などに要請してきた項目であり歓迎したいと思います。ただ、同時に経営努力も求められると思うので、筋肉質どころか筋肉までもそぎ落とさないように、警戒が必要です。特にJR北海道の若年退職問題は、賃金、労働条件、将来展望などを考えたときに、働き続けられないという若者の判断でありますので、深刻な問題であると受け止めています。JR北海道の経営を職場から立て直していかないと将来展望は見えてこないと思いますので、改善を求めたいと思います。

 阪神淡路大震災から26年、東日本大震災から間もなく10年が経過しようとしており、いつ何が起きるかわからないご時世です。昨今は、「労働者が足りない」とAIやロボットを活用し、電車やBRTのバスまでも自動運転するとしています。しかし、JRは鉄道会社ですから、鉄道の安全を蔑ろにした事業経営はあり得ません。会社も「安全はトッププライオリティ」といいますが、忠実に実行していただきたいと思います。安全・安定輸送を守っているのは社員です。社員が安心して安全に働けない会社に、安全・安定輸送は築けません。このことを初心として対応してまいりたいと思います。

労働力の再生産費として賃金の改善を求めていく

 3点目は、2021年春闘についてです。

 経団連は、1月19日に経営労働政策特別委員会報告を発表し、「各社一律の賃上げは、現実的ではない」「企業の実情に適した賃金決定が必要で、賞与も検討する」などとしました。

 安倍前首相がけん引した官製春闘は閉幕し、政治主導の賃上げは終焉しました。したがって、経団連の指針がストレートに反映される厳しい春闘が想定されます。

 JR各社は、コロナ禍で経営が苦しい状況にあり、今後は見通せない状況にありますが、今日この時間にもコロナ感染の恐怖にさらされながら日夜頑張っている社員がおり、JR病院を含めた医療従事者がいるからこそ、会社が成り立っているわけです。その社員にも家庭があり、生活があります。生活の底上げをしないかぎり、家庭も経済もそして会社も支えていけません。社員が生き・働くため、労働力の対価として再生産費として賃金の改善を求めていくことに変わりはありません。

 2021年春闘においては、まずは定期昇給の完全実施を大前提とし、さらに基本給(平均)の1.87%相当額、5000円を基本とするベースアップを求め、全社とも有額回答を求めたいと思います。この要求を必ず勝ち取る意思統一を深めることが何よりも重要です。さらにコロナ禍における労働条件の切り下げを許すことなく、労働条件の改善に全力を挙げる春闘にしたいと思います。特にグループ会社の賃金は、低額に抑えられていますので、本体同様に生活の底上げを図る意味からも改善を求めたいと思います。さらに労働条件は、過酷とも言える実態も見受けられるので働き続けることのできる労働条件の確保・改善を求めたいと思います。

 同時に夏季・年末手当の年間要求月数も5.0ヵ月基準としました。すでにコロナ禍により、5ヵ月を割り込む会社が増えています。21年度は、何としても回復させ、上積みを目指すこととします。

 各社の経営状態やエリア本部の力量が大きく違うことを踏まえ、主体的な力量と客観的な情勢を的確に捉えた運動展開が必要で、その要求獲得に向けたすべての闘いが国労春闘であると位置づけた運動を構築していきます。

総選挙で野党結集の政権確立を

 4点目は、政治的な課題です。

 1月18日に第204通常国会が召集されました。

 菅首相は、「桜を見る会」や連続する閣僚の汚職問題などの政治不信には蓋をしてきた「安倍政治」を忠実に引き継ぎ、説明も反省も語ることはありませんでした。

 一方では、脱炭素社会を掲げ、2050年度までに温室効果ガスの排出ゼロを目指すとしています。これは歓迎する話ですが、そのために原発を稼働させるという話は許されるものではありません。福島第一原発事故から10年の節目を迎えようとしています。国労が取り組んできたフクシマ交流で目にしてきたフクシマの現状や高校生平和大使などの訴えを思い起こせば、原発再稼働や新造を認めることは到底できません。

 また、1月22日に核兵器を史上初めて非人道的で違法とした「核兵器禁止条約」が122か国・地域の賛成を得て発効されましたが、日本政府はいまだに署名・批准していません。世界で唯一の被爆国として悲惨な現状を訴え、核禁条約の先頭に立つべきです。

 今年は、これから千葉、秋田の知事選と東京都議会選挙などが行われ、10月21日に衆議院議員の任期満了を迎えます。したがって、国民を裏切り続ける政権を終わらせるための総選挙が秋までには必ず行われます。国労方針に基づく野党が結集した、政権確立に向けた闘いに全力を挙げることとします。

 以上4点の中心的な課題について述べましたが、これから迎える2021年春闘の闘いから、新入社員対策などの組織拡大の取り組みを中心に、次期全国大会まで全力を挙げる決意を申し上げて中央執行委員会を代表してのご挨拶といたします。