国労第192回拡大中央委員会 委員長あいさつ(抜粋)

22春闘を皮切りに組織拡大を中心とした
運動の成果を全国大会に持ち寄ろう

規約に基づくリモートを活用しての拡大委員会を開催

 第192回拡大中央委員会もコロナ禍のため、構成員が一堂に会すことができなかったことは非常に残念ですが、昨年の全国大会でリモートなどに対応した規約・規則の整備を行いましたので、本日は規約に基づくリモートを活用しての開催となっていることを確認しておきたいと思います。
 コロナウイルス感染症が拡大し、まん延防止等重点措置が出されて警戒感が強まる中にあって、東京地本執行部の皆さんに準備を含めてご協力いただいていることに、厚く御礼申し上げます。
 一昨年1月14日に国内における新型コロナウイルスの感染者が報告され2年が経過しましたが、緊急事態宣言や「まん防」などが途切れることなく出されたため、生活や移動に制限がかかり、精神的な負担も多かったと思います。現在は「オミクロン株」が猛威を振るっていますが、先進国と貧困にあえぐ国々ではワクチン接種率に大きな開きが生じワクチン格差となっています。世界規模で広がるウイルスの発生を抑えるためにも格差を排除する世界的な協力体制が必要です。
 新型コロナ感染症がまん延し始めた年は、諸会議や行動の中止を余儀なくされ、組合運動に大きな問題が生じましたが、規約・規則の一部改正を行い緊急事態宣言等が出されても運動を止めることなく執り行うための整備を行いました。
 リモートの活用については今後の運動展開においては必要不可欠になると考えており、活用の幅を広げていきたいと思います。リモートを活用すれば、東京に来なければ聞けなかった講演を聞くことが可能であり、地元から中央委員会に欠席することなく参加することも可能となりました。本来、組合運動は、組合員が集まり議論し意思統一を図りながら団結を高めていくのが基本であり今後も追及していきますが、ウィズコロナや今後の組織現状などを総合的に勘案して、会議の参加者を確保し、運動の幅を広げていく観点からも全国からのご意見を伺いながらリモートを活用したいと思います。

最重要課題である組織拡大を目的と目標を持って実践しよう

 第一の課題は、「国労の課題と方向性 今後5年を見据えた組織並びに運動展開」についてです。
 今年は中間総括の年ですが、組織を支える財政については、おおむね順調に推移しているものの、今後は組合員の減少に伴う収入の低下は避けられず厳しい現状です。5年ビジョンの出口に向け、その先も見越して考えていきたいと思います。
 最重要の課題である組織の推移は、当初見込みより組織人員はプラスで推移していますが、右肩下がりの傾向に変化はありません。このまま推移するならば厳しい現状は避けられず、様々な検討と判断が求められてくると考えます。
 本部は、8年間にわたり取り組んだ闘争指令第1号の総括を行い、昨年9月に開催した「第1回組織拡大対策会議」において取り組みの成果と課題を明らかにして新たな方針を確立しました。今年度は、組織拡大の最低限の目標として「各機関1名を確実に拡大し、全国で50名の拡大を目指す」ことを確認し、拡大中央委員会までを第1次ゾーンとして取り組んできました。組織拡大は、あきらめずに目的と目標をもって実践すること以外に成果は出せないので、各機関で何ができるのかを組合員と議論して「実行」に移すことが重要です。本日の委員会に置いて第1ゾーンの成果と課題について報告願いたいと思います。
 JR東日本においては、社員の8割が組合未加入となっていますが、「社友会」は労働組合ではないので、法律や労働協約に基づく団体交渉権や団体行動権を行使することはできません。親睦団体の多くは、会社からの一方的な伝達と協力要請に終始することが常です。会社施策を検討し、改善を求めることができるのは労働組合だけであることを訴え、職場で国労運動を実践することから組織拡大につなげていくことが重要です。

人への投資を増やし労働者が安心して働き豊かに暮らす社会を作ろう

 第二の課題は、JRの経営と安全・安定輸送の確立についてです。
 コロナ禍の2年間で人々の生活や働き方が大きく変わり、それに伴う人流や物流も変わりました。結果としてJR各社の収支は大きく落ち込み、今年の3月期決算では2年連続の赤字が予想されています。これに伴いJR各社では数年先の会社施策を前倒ししながら矢継ぎ早に提案・実施しています。
 JR東日本では、複数駅を一つにまとめたり、駅と乗務員区を一つの職場にして一人何役もこなす「柔軟な働き方」が提案されています。JR西日本においても、輸送力の適正化や駅業務・運営体制見直しなどで262名もの要員削減が提案されています。
 鉄道業務は専門的な知識と経験を積むことで安全とサービスを両立させてきましたので、複数の作業をすることで知識と技能が確立され安全が担保できるのか大いに疑問ですし、行き過ぎた効率化は、職場の総合力を奪います。阪神淡路大震災から27年、東日本大震災から10年が経過しましたが、いつ何が起きるかわからないご時世です。さらに未知の感染症がまん延しているときに、限られた要員で複数業務をこなすのは鉄道の安全を危機にさらすのではないでしょうか。安全を担保する施策とするための交渉を強化したいと思います。
 両社とも大幅な支社体制の見直しも考えていますので、今後の交渉単位の変更も考えられることから、国労としての対応が求められるならば議論が必要です。関係するエリア本部と連携して議論と判断をしてまいりたいと思います。
 もう一つは、自動運転など技術革新の問題です。コロナ禍や生産年齢人口の減少に対する対策として研究が進み、すでに香椎線や常磐線で、ATSやATOを活用した自動運転が行われています。一方、駅の体制は限りなく要員が絞られ、無人駅や無人改札なども増えていますが、首都圏で「毎日が異常時」と言われるほど発生する事故やトラブルに誰が対応するのでしょうか。会社は事故やトラブルは異常時と言いますが、その異常時からの回復過程が社員にとっても、旅客にとっても重要な場面です。自動運転の技術的な問題と駅の要員体制を含む総合的な問題として、最大の使命である「安全」を確立することができるのか、各エリアにおける議論展開をお願いしたいと思います。
 自然災害が多発し、ウィズコロナの時代だからこそ、人への投資を増やし、労働者が安心して働き豊かに暮らす社会を作っていかないといけません。社会を動かしていくうえで必要不可欠なエッセンシャルワーカーの地位を向上させ、育てていく社会が求められていますし、公共交通の在り方を含めて国労としての検証を進めていきたいと思います。

定期昇給を完全実施させ新賃金要求を勝ち取ろう

 第三の課題は、2022年春闘についてです。
 岸田政権が誕生しましたが官製春闘を引き続き行う考えを示し、財界に対し賃上げ要請を行いましたが、賃金は政治が決めるものではなく、労使で決めるものであり、春闘の破壊を目論んでいるとしか思えません。長く続いたアベノミクスでは貧富の格差が拡大し、昨年度の企業の利益剰余金(内部留保)は9年連続で過去最高を更新する一方で、一般労働者の現金給与総額の実質賃金は、2016をピークに減り続けています。
 2022年春闘は、コロナ禍においてJRのみならず、私鉄、航空、観光など交運労協が結集する産業は軒並み赤字に転落し厳しい状況ですが、エッセンシャルワーカーである、公共交通の労働者の生活改善のため連帯して闘いたいと思います。
 今春闘では、定期昇給を完全実施させることを大前提として新賃金要求を掲げて闘うこととします。各エリア委員会終了後の2月14日に各社一斉に要求を提出し、各エリアで創意工夫して全組合員が参加する国労春闘を展開していくことといたします。

参議院選挙で国労方針に基づく野党の勝利に向け全力を挙げよう

 第四の課題は、政治的な課題です。
 岸田首相は、昨年12月の臨時国会において「敵基地攻撃能力も含め、あらゆる選択肢を排除せず現実的に検討する」と表明しました。日本の防衛費は10年連続で伸び続け、自民党は「防衛費をGDP比2%以上も念頭に増額を目指す」ことを選挙公約に掲げています。安倍政権下での安保法制=戦争法の強行可決など一連の流れを見ると、「戦争のできる国」から「戦争をする国」に向かって進んでいることがうかがえ、非常に危険であるといえます。
 沖縄の基地問題で岸田首相は、「丁寧な説明、対話による信頼を築く」としていますが、沖縄県民は何度も「沖縄に基地はいらない、基地の辺野古移設反対!」と訴え民意を示してきましたが、一方的に工事が進んでいます。基地工事個所の軟弱地盤問題では、裁判になっていくことは必至の情勢で憤りを禁じ得ませんが、1月23日に投開票された名護市長選挙では、残念ながら基地問題を語らず経済対策に論点をすり替えた現職が当選しました。首長として永遠と続く基地問題を語るべきであり、市民に対する責任放棄であるといえ、秋の知事選に向け体制を立て直して臨むことが求められています。
 政府は、カーボンニュートラルの観点から、原発は脱炭素電源として重視して再稼働を進めるとしています。原発事故を起こし地域住民のみならず世界に対しても大きな悪影響をもたらした日本が、脱炭素と原発を同列に論じることは認めることができません。
 国労は、昨年11月に第9回目となる「国労フクシマ交流・視察学習会」を開催し、次世代の組合員を中心に取り組みを展開しました。9年にわたり不通となっていた常磐線は復旧を果たしましたが、放射能が降り注いだ地域では、現在でも線量が高く帰還困難区域に指定されバリケードが張り巡らされています。駅や街並みが新しくなっても、そこに住民の生活はありません。あらためて、原発の恐ろしさと、人類が核をコントロールできていない現実を突きつけられました。今後も福島の仲間とともに闘い、全国の仲間と連帯し、人間が安心して生活することができる環境を取り戻すために取り組みたいと思っています。
 今年は、夏に参議院選挙が行われます。国民を裏切り続ける自公政権にストップをかけるためにも、国労方針に基づく野党の勝利に向け全力を挙げることとします。

交運共済は来年7月にこくみん共済COOPへ契約移転

 第五の課題は、交運共済をめぐる状況についてです。
 交運共済については、来年7月にこくみん共済COOPへ契約移転することが決定されています。本部は昨年来、交運共済本部を含め、こくみん共済と意見交換を行い、契約者である組合員に不利益がないように議論しています。その中間的な現状については、昨日の全国代表者会議で報告しましたが、今後の共済事業を進めていく母体となる、協力団体の枠組みを来月には判断することになっています。今後も不安のないように進めていきますので不明点などあれば一報いただければと思います。
 以上5点の中心的な課題について述べましたが、これから迎える2022年春闘の闘いから、組織拡大の取り組みを中心に、次期全国大会まで全力を挙げる決意を申し上げて中央執行委員会を代表してのご挨拶といたします。