国労第195回拡大中央委員会 委員長あいさつ

 第195回拡大中央委員会にご参集いただきました構成員、そして会場及びリモートで参加されている傍聴者の皆さん大変ご苦労さまです。中央執行委員長の松川です。中央執行委員会を代表してご挨拶申し上げます。
 昨年は、能登半島地震、羽田空港衝突事故で一年の幕が明けました。能登地方は大きな災害となったため、国労も支援カンパを取り組み、各級機関のご協力のもと、多大なるカンパを集約することができ、北陸地本を中心に関係者・自治体に支援金をお渡しすることができました。国労組合員の心温まる取り組みに対して心より感謝いたします。現地は、豪雨被害も重なり復興途上であり、一日も早い復興を願うところです。
 長く続いたコロナ禍からやっと抜け出した日本の経済は、インバウンド需要なども取り込みながら回復し、一時赤字に転落したJR各社の経営も順調に回復してきました。昨年の春闘では1991年以来33年ぶりに賃上げが5%を超えたと集約されています。しかし、労働者が実際に受け取った「名目賃金」は、賃上げや夏季年末手当の増加などにより35カ月連続のプラスであるものの、物価上昇が激しく、特に生活必需品の物価が高騰しているため、実質賃金は減少し続けており賃上げの実感がなくなっています。
 経営側はこの現状を受けて、新規採用を含む人財確保が難しくなっていることから、初任給や手当の改善、さらにベースアップによる賃上げなどを企業側から発表する動きも見られます。
 これまで日本の各企業は利益をため込み、内部留保金は毎年過去最高を更新し続けていますが、労働者へ賃金という形で配分することを怠ってきました。その結果、日本全体の低賃金構造が出来上がり、若年層が離職する一因になっているといえます。JR各社も同様であり、私たちは過去最高益の時も、コロナ禍の時も常に我慢を強いられ、労働力に見合った賃金を得ることができていません。今年になってJR各社の収入は対前年を上回っており、年末年始輸送はコロナ前をも上回っています。さらに運賃改定の考えを示していることから、さらなる収入の上積みを目指しています。
 したがって、2025年春闘では、労働者側も生活改善のための賃上げを求めて総団結して闘うことが必要です。国労は、労働力の再生産費として生活改善が実感できる賃上げを勝ち取るために全組合員が参加する春闘を目指すこととします。具体的には、6.1%相当額17,000円を基本とする賃金要求を掲げ、3・4中央総行動をはじめとする行動に全国から決起し、中央・地方が連携して闘いを構築することとします。
 そのためにも国労組織の強化・拡大は必須の課題です。
 この間、本部は、5年ビジョンの総括から新たな方針を提起し、組織拡大運動に全力をあげてきました。今年度も昨年9月に組織拡大対策会議を立ち上げ、「各機関1名を確実に拡大し、全国で50名の拡大を目指す」ことを確認しています。本日までを第1ゾーンとして取り組み、仙台、近畿地本から拡大の報告がありました。全国的に厳しい組織現状にありながらも、拡大運動を取り組めば結果が出せることを証明することができました。
 本日から組織拡大の第2ゾーンに入ります。各機関は、「1名拡大」という目標を明確に掲げ、すでに拡大している機関もさらなる上積みのために何をするのか具体的に取り組んでください。現在の国労組織は危機的状況ですが、あらためて全機関が持てる力を発揮して拡大しようじゃありませんか。
 日本の労働組合加入率16%、JR東日本で14%と言われています。これでは、労働者の権利や生活を守っていくことはできません。私は、1971年の国労第32回全国大会で「座して死を待つより立って反撃に転じよう」と訴え、組織破壊攻撃であったマル生と闘う決意を述べた当時の中川委員長と同じ気持ちです。もう一度国労運動を!労働組合運動を職場から復権させるために、組織拡大から反撃に転じようではありませんか。
本委員会がその転機となるように各級機関で全力を挙げる事を強く訴えます。
 3点目の課題は、JRの安全とローカル線を守る闘いです。
 昨年は残念ながら多くの鉄道事故が発生しました。1月に東北新幹線で架線事故が発生し、作業員が感電する事故も併発。3月には山形新幹線郡山駅で停止位置のオーバーラン。その後も、東海道新幹線で保守用車両衝突。そして、東北新幹線が時速315kmで走行中に列車分離する前代未聞の大事故が発生しました。一方で、貨物列車の脱線事故も相次ぎました。新山口駅。函館本線の森―石倉間。鹿児島本線の川内駅。12月には東青森駅などで線路保守に起因する事故が多発しました。また、事故の検証から、「輪軸」データ改ざん問題へと発展し、多くの鉄道事業者で「不適切な事案」があり、改ざんも確認されました。さらにJR九州高速船でも浸水にかかわるデータの改ざんや浸水センサーの不正が見つかりました。
 国鉄「分割・民営」化から38年の月日が経過しようとしていますが、安全にかかわる技術の継承や安全意識、安全文化が引き継がれてきたのか疑問符を付けざるを得ません。併せて、現場における点検やメンテナンスもAIなどに取って代わろうとしていますが、現場からの声や指摘を取り込む会社の業務体制が検証されなければなりませんし、労働組合も現場力が弱くなっていることを反省しなければなりません。福地山線脱線事故や特急いなほの転覆事故から20年目の今年。人命を巻き込んだ大事故を二度と起さないためにも、「安全は輸送業務の最大の使命である」ことをもう一度労使で確認しなければなりません。JR九州高速船は廃業に追い込まれました。一旦事故が起これば企業の信頼は失墜することを改めて意識し、「安全あっての鉄道会社」であることを追求する必要があります。
 本部は昨年シンポジウムを開催し、安全問題と併せてローカル線問題に光を当ててきました。いまローカル線は、儲からないからと切り捨てられようとしています。しかし「公共交通とは何でしょうか。儲からないと成立しないのでしょうか」という問いに突き当たっています。利用者にとっては、山手線もローカル線も重要な移動手段であることに変わりはありません。鉄道事業者と自治体、行政が一体となって地方における地域社会をトータル的に考える必要がありますし、その中心が人流と物流を繋ぐ公共交通であると考えます。今ある鉄道を生かして地域交通を考える事をあらためて訴えます。昨年開催したシンポジウムを全国展開し、4月の「安全行動日」を取り組みながら、さらなる安全・安定輸送の確立を目指しましょう。
 4点目の課題は、政治課題です。
 金権腐敗体質から抜け出せない自民党は、昨年の衆議院選挙において、公明党と共に惨敗し少数与党へと転落しました。しかし、「戦争をする国」へ突き進む改憲への動きは止まることはありませんし、新たに定めるエネルギー政策では原発再稼働に加え、原発の新増設をも認めるなど原発回帰へと大きく舵を切りました。
 私たちは、昨年12月に第12回フクシマ交流・視察学習会を成功裡に開催し、原発に依存しない世界の確立に向け取り組みを強化し、私たちの闘いは「微力だけど無力じゃない」ことを確認してきました。福島第一原発事故を風化させることなく、核の安全利用はあり得ないことを訴え続けなければいけません。
 今年は戦後80年を迎えます。世界的に広がる戦争の惨状において、核への危機が今までになく広まる中で、日本被団協がノーベル平和賞を受賞し、核に対する世界的な危機感が示されました。国労は被爆者対策協議会と共に、4月に「ヒロシマ・ナガサキ・フクシマ」の取り組みをさらに強化するため、被爆80年視察学習会を開催します。被爆者も高齢化が進み、実相を語り継ぐことが大切ですし、被爆者の健康管理や福祉の増進などの活動をさらに進めることが求められています。
 現政権が、防衛増税も視野に戦力拡大を目指すことを明らかにしており、戦争の惨劇をこれ以上繰り広げることを私たちは断じて許してはいけません。このような政治を進める自公政権にNOを突きつけるためにも、夏の参議院議員選挙では、平和な暮らしと国民の手に政治を取り戻すために全力をあげましょう。
 最後に共済運動についてです。
 この間、こくみんコープへの契約移転から、現在、総合共済の改定に向けた手続きに入っています。この間の連続する取り組みに対し感謝申し上げます。契約者保護の観点からさらに取り組みを進めてまいりたいと思います。引き続きのご協力をお願いします。
 以上、中心的な課題について述べましたが、多くの課題の解決のためには仲間を増やして国労の力をつけていくしかありません。これから迎える2025年春闘の闘いから、第2ゾーンとなる組織拡大の取り組みを中心に、次期全国大会まで全力を挙げる決意を申し上げて中央執行委員会を代表してのご挨拶といたします。

以 上