第88回定期全国大会の「大会宣言」は谷澤女性部長が提案し、拍手で採択した。

 国鉄労働組合は、7月30日~31日、静岡県伊東市において第88回定期全国大会を開催した。

 大会では、一年間の闘いの総括と組織強化・拡大を柱に、JRの安全・安定輸送確立、JRおよびグループ会社を含む非正規労働者の正社員化と処遇改善、合理化反対、労働条件改善、反戦・平和、原発再稼働反対、辺野古新基地移設反対、2020年春闘の取り組みなど向こう一年間の闘う方針と決意を固めあった。

 とりわけ、向こう5年間を見据えた国労の課題と方向性のビジョンについて、この間、真摯に討議を深めてきたが、次代を担う世代に国鉄労働組合の運動と組織・財政を継承発展させていくための議論をさらに継続していく重要性について、お互いが認識を共有することができた。

 安倍政権は、10月からの消費税率の10%への引き上げ、トランプ米大統領との首脳会談で「加速させる」ことを合意した農産品や自動車の関税引き下げをめぐる日米の貿易交渉など、国民生活に直結し、審議すべき課題が山積していたにもかかわらず、第198回通常国会で「憲法改正」を最重要課題と位置づけ、3月末の予算成立以降は、国政全般の審議の場である予算委員会の開催を拒否し、衆議院で約4ヵ月、参議院で約3ヵ月もの間、国会を空転させ、目前に迫る第25回参議院議員選挙における争点ぼかしとすり替えに躍起となった。

 7月21日に投開票された参議院議員選挙では、政治に対する失望感が渦巻いて投票率が48・8%にとどまるなか、全国32の一人区のうち10選挙区で野党統一候補が勝利し、維新も含めた改憲勢力を、非改選と合わせても「3分の2」割れに追い込むことができた。しかしながら、安倍首相は、翌22日、記者会見で、「安定した政治基盤の上に新しい令和の時代の国づくりをしっかり進めよと、国民の皆さまからの力強い信任をいただいた」と述べ、自らの宿願である明文改憲の意思をあらためて表明した。数の力を露骨に振りかざした安倍自公政権の強引な政権運営の手法からみても、今後、野党の一部を取り込みながら憲法改正へと大きく舵を切ってくることは想像に難くない。私たちは、総力をあげて国会の内外で立憲主義に基づく議会政治と平和憲法に立脚した国民主権の民主主義を取り戻すことに全力をあげなければならない。

 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から8年5ヵ月近くが経過した。いまだ汚染水や地下水への対策、溶融燃料の取り出し方法の確立など廃炉に向けた工程の出口が見えないまま、「核のゴミ」問題もその処理の見通しが立っていない。こうしたなか、東京電力は、福島第二原発を廃炉にすることを正式決定する見通しを発表した。被災地では住宅の再建がおおむね進む一方で、依然として全国で5万人以上が避難生活を余儀なくされ、人口減少や高齢者の孤立なども課題となっている。私たちは引き続き、原発再稼働阻止、再生可能なエネルギーへの政策転換と脱原発社会の実現を求め、平和フォーラムをはじめ、あらゆる団体と連携を図りながら全国的な運動を強化していく。

 福知山線及び羽越本線での脱線事故から14年目を迎えた。しかし、今日に至るも、事故の教訓が生かされず、JR各社において重大インシデントやトラブルなどが後を絶たない。昨年11月9日、千歳線・新札幌構内で、下り第一出発信号機が線路方向に倒壊した事故、そして今年3月25日には伊野線・朝倉停留場において、行き違いを行う対向車両が到着した通票の受け取りを失念し、車両を出発させ、前方の朝倉交差点に対向車が停止していることを視認したため、直ちに車両を停止させた事故が発生した。一歩間違えれば、大事故につながりかねないこうした事象や労災事故はJRおよびグループ会社でも連続して発生しており、文字通り、安全輸送の確立と信頼回復は待ったなしの課題となっている。国労は鉄道輸送業務に携わる労働組合として、JRの社会的責任の履行やコンプライアンス遵守のための検証を間断なく行い、団体交渉の強化をはじめとする事故防止対策をさらに強化しなければならない。そのためにも、「安全で誰もが利用しやすいJR」として利用者や地域の視点に立ちながら、交運労協に結集する他産別やすべての交通・運輸労働者の仲間との共闘・連帯を一層深め、「誰もが安心・安全に働ける職場づくり」をめざした取り組みを進めることが重要である。

 日本経済は、回復基調といわれる反面、その回復に実質賃金が追いつかず、実体経済は悪化する一方である。それだけにJR各社に共通する契約社員の雇い止め問題の解消と正社員化の実現は喫緊の課題である。私たちは引き続き、JR各社に対して希望する契約社員の「正社員化」を求める取り組みを重点課題として位置づけ、あらゆる機会を通じて粘り強く働きかけを行っていく。

 国労は、第81回定期全国大会で、組織拡大を喫緊の課題として全国的に統一行動に決起することを確認し、闘争指令第一号にもとづき、7年にわたり、組織拡大運動に全力をあげて取り組んできた。全国で築き上げた拡大の条件を結実させるべく、不退転の決意を持って組織拡大に取り組むことが重要である。

 私たちは、JRにおいてもっとも長い歴史と伝統を持つ組織としての経験と実績を発揮しながら、組織を取り巻く現状を見据え、職場での労働条件や待遇改善に向けた日常からの地道な運動の積み重ねにより、若い世代にアピールできる国労運動の構築をめざし、全組織が一丸となって最重要課題である組織強化・拡大に向け、全力をあげる決意である。

 右、宣言する。

2019年7月31日 国鉄労働組合 第88回定期全国大会