第89回定期全国大会にご参集いただいた仲間の皆さん、大変ご苦労さまです。中央執行委員長の松川です。中央執行委員会を代表して一言ご挨拶申し上げます。

 今回の大会は、コロナ禍ということで世界中が大変な状況にある中、異例な形での開催を余儀なくされました。日々組合員や家族が不安の毎日を過ごしている中において、東京地本が準備地本を受け入れていただき、本日も鎌田委員長をはじめ、執行部を中心に準備していただいております。心から感謝申し上げます。

 新型コロナウイルス感染症は今年の1月から広がり始め、世界ではすでに3,000万人に迫る人が感染し、90万人を超える方々が命を落としています。日本においても感染者は8万人に迫り、収まる気配がありません。何よりも、治療薬やワクチンがないことにより、心理的な動揺が高まっています。感染に対する心配を常に抱えながらも鉄路を守り、安全運行、お客さま対応に専念されている組合員、そしてまさに医療現場の最前線に従事されている組合員に対し敬意を表するとともに、関係するみなさまにも国鉄労働組合を代表して感謝を申し上げます。

 当初、本部は東京オリンピック・パラリンピックの関係もあり、若干時期を早めて規約に基づき7月に大会を開催する予定で準備をしてきました。しかし、感染拡大により、一旦は9月開催に切り替えて指令を発し通常開催をめざしていましたが、コロナの収まりが見えないことから、大会構成員はもとより、組合員、書記職員、家族の命と健康を考慮して書面開催の判断をいたしました。

 春闘期から今日まで、集会・会議の中止、書面開催への切り替えなどで、勤務や交通機関の手配などでご苦労かけたこと、大変申し訳なく思います。また、大会を含めた一連の会議のあり方について、「規約に基づく取り扱い」を代議員や多くの地方本部から求められていたにも関わらず、規約・規則の改正が大会に間に合わなかったことについて、お詫びを申し上げます。全国大会を含む各種会議やエリア大会・地方大会が書面開催を余儀なくされ、次期中央委員会も危ぶまれている現状を踏まえ、新年度の事案として速やかに対処する所存です。

 書面開催という形式上、すでに代議員からの発言を受けています。その中で、長野の北沢・折橋代議員からそれぞれ昨年の台風19号に対するカンパ、高崎の五十嵐代議員から組織拡大に対する激励、千葉の安田代議員から昨年の台風被害に対する物心両面の激励に対して、いずれも全国の組合員に対してお礼の言葉が述べられていることをご報告させていただきます。

 私たちを取り巻く情勢は、コロナ禍によって誰も経験したことのないような環境に置かれています。しかし、そのような中にあっても国労運動を着実に進めていかなければなりません。

 そのための第一の課題は、組織強化・拡大の取り組みです。

 本部は、昨年の大会で5年ビジョンを確認し取り組みを進めてきましたが、中心的な課題は国労運動を次世代に継承するために組織拡大運動を取り組むということです。厳しい組織事情を乗り越えて、次世代に国労運動を継承し、組織を発展させていくためには、組織拡大が必要であり、このこと抜きに組織展望は語れません。この1年間で、22歳から63歳まで20名の拡大をいただきましたが、平均年齢は36歳です。次世代を形成していくには必要不可欠の仲間たちが加入していただきました。これは指導された役員、実践する組合員の連携によるものです。厳しい現状の中での取り組みに対して感謝を申し上げます。

 数名の代議員から青年対策について具体的な展開を求めるご意見がありました、併せて近畿の大北代議員から「西日本と九州の青年部交流の取り組み」が報告されています。青年・女性部の交流は、次世代を作るうえで不可欠なものです。本部もエリア・地方と連帯して取り組みを広めたいと思います。その取り組みもあって、近畿地本では、吹田機関区において3名の次世代の拡大を成し遂げています。国労の取り組みが浸透してきている証であろうと思います。

 また、東京地本神奈川地区本部で7名、仙台地本で3名の拡大があり、そのうち8名がJESS(ジェス)、及びLIVIT(リビット)という駅業務の委託会社社員でした。JRの経営が多角化しグループ企業で成り立っている現在を考えると重要な拡大であると思っています。そして共通しているのが、東京の石井・鈴木雅典代議員の発言にもそれぞれあるように、近年加入した組合員が自ら加入活動を行い、仲間づくりをしているという点です。東京の長瀬代議員は、「青年部の再建を念願としてきた。若手の組合員が『自分たちが拡大する』と組合説明会を企画している」と発言しています。役員の思いと指導、若手の実践という運動の展開ができているということです。この取り組みに学び合いたいと思います。

 コロナ禍で自粛ムードですが、組織拡大の取り組みは展開できることを組合員が証明してくれました。出来ないことを正当化せず、全国の取り組みに学ばなければいけません。やらずにできない言い訳をするのは運動ではありません。やってだめでも総括することで次の運動展開が見えてきます。あきらめてしまえばそれで終わりです。拡大の実績のみならず、拡大には至らないまでも多くの取り組みが行われています。このような経験から学ぶために取り組んできた組織拡大経験交流集会は、コロナ禍で中止を余儀なくされましたため文章提起としましたが、今年度は創意工夫した交流ができるように企画して実践していきたいと思います。

 本部が、2012年に発した組織拡大に関する闘争指令第1号も8年が経過し、時代背景や組織現状が変化していることから、今年度一旦総括して新たな方針を示したいと考えています。

 第二の課題は、安全・安定輸送を求める取り組みです。

 新型コロナウイルスの感染拡大により、JRを取り巻く環境は大きく変化しました。乗降客数の激減は著しく、三大繁忙期であるGWのJR各社の新幹線利用客は昨年比95%減、お盆は76%減。特に成田エクスプレスが2%、関西空港線(日根野~関西空港)が5%の乗車率でした。また、在宅勤務の拡大や本社機能の地方化などにより、東京からの人口流出が5月に続き7月にも確認され過去最大となり、人流の変化が起こっています。この結果、JR株上場4社の第1四半期決算は大幅赤字となり、来年3月期は、JR東日本・西日本で赤字決算を予想しています。すでにJR東日本では、夏季手当で110億円削減、設備投資など総体で1,500億円コストカットの意向であり、西日本においては一旦締結した年間臨給の見直しが提案され、さらに宣伝広告費などのカットを東海、西日本も検討しています。併せて、一時帰休の制度化、終電時間の繰り上げや変動運賃の検討など、あらゆる検討が行われ、各社ともコロナの影響は長引くとみて、新たなビジネスモデルを考えるとしています。

 したがって、各社で研究が進められてきた、AIの活用や自動化が加速されることが想定されますが、安全・安定輸送は、絶対条件であり譲れるものではありません。安全・安定輸送を確立できる、適正要員の配置と安全に安心して働くことのできる労働条件の確保は重要です。代議員の発言では、「職場で仲間の声を拾い集め、要求化して改善につなげている」職場闘争が複数報告されています。職場から仲間を作り、運動を構築していきたいと思います。

 労働条件の最たるものである賃金関係ですが、すでに夏季手当において昨年を大きく下回る回答が示されるなど影響が出ています。さらに年末手当や新賃金交渉に影を落とすことは必至の情勢ですが、これまで過去最高、最高益更新などと実績を積み重ねるなど、社員の働きにより経営を支えてきたにもかかわらず、それほど賃金関係が高騰した認識はありません。しかし、一旦経営が不振になると、一気に減額にかじを切る経営姿勢は納得できるものではありません。労働力の再生産費として、健康に働き、生活することのできる賃金を求める2021年春闘にしたいと思います。

 さらには、近年繰り返される自然災害への対応です。今年も令和2年7月豪雨により、JR九州では17線区730件で被害が確認されるなど、大きな災害となりました。被害にあわれたみなさまにはお見舞いを申し上げます。毎年の豪雨や台風により、河川の橋脚が流出する事象が増えていることから、橋脚の抜本的な見直しが必要になっています。東日本大震災や九州豪雨で被災した線区では、BRTに転換される事例が多くなっていることから、地域と連携した取り組みが求められています。本部が取り組んでいる国交省要請などを含めコロナ禍で今まで通りにはいきませんが、国や行政に対する要請を創意工夫して取り組むこととします。
第三の課題は、5年ビジョンについてです。

 昨年の大会で5年ビジョンを確認してから1年が経過しました。ビジョンの中心的な課題としてきた組織拡大は、一定の効果をあげているものの、組織現状を転嫁するものにはなっておらず、依然厳しい現状です。しかし、次世代の役員登用が進む地方本部も増えましたが、加入した仲間の育成を行いながら、次世代につなげていく取り組みが急務です。一方で財政関係は、スト基金の運用により、初年度は予定通り剰余金も生み出されてきました。組合費の見直しなども実施してきましたが、残り4年間の運用となりますから、緊縮財政に努め、最終年度にスト基金に戻せるように努力していきます。

 ビジョンに掲げた組織のあり方については、なぜ組織のあり方の議論が必要なのかの認識をもう一度すり合わせる必要があります。現状の組織は、国鉄時代の体制をほぼ引き継ぎ、現在に至っていますが、組織数や時代背景も大きく変化していることから、現状と未来に展望が持てる組織への転換を考えることは当然のことで、その議論が求められているのです。これまでも大会などで様々な意見をいただいているところですが、意見が一致しないからといって議論を避けることは致しません。色々な意見があるのが正常な労働組合であり、議論して答えを出していくのが国鉄労働組合です。

 また、今年の組検答申にもありますが、専従配置基準の見直しも行います。一方、代議員の選出基準のエリア化については、2年越しの議論でしたが結論には至りませんでした。代議員からは、「問題の先送りが多すぎる、次世代に対して無責任な対応」と厳しい意見をいただきました。大変申し訳なく思っており、速やかに結論を導き出せる議論をしていきます。

 一年が経過したビジョンですが、来年の定期大会では中間総括を行って、2022年の定期大会では一旦見直しをかけて5年ビジョンの先も見越したものを提起したいと考えています。是非、国労の未来のために、自分の足元を見つめ、組織を強化できる体制づくりへの議論に全組合員が参加していただきたいと思います。

 第四の課題は、政治に関わる課題です。

 7年8ヵ月に渡り国民に背を向け続けた安倍首相は、8月28日に辞任を表明し、9月16日、菅内閣が発足しました。安倍政権では、国民に目を向けることなく、森友学園や加計学園、「桜を見る会」などに見られるように、公文書の改ざん、虚偽答弁、データねつ造、偽装や隠蔽が横行し、政治腐敗・不信が深刻となりました。安倍政権の最大の汚点は、政治が法や憲法を捻じ曲げたことです。また、アベノミクスは、一部の企業には恩恵をもたらしたものの、国民に行き渡ることはありませんでした。

 企業の利益剰余金(内部留保)は、過去最高を更新し続け、GDP成長率もプラス成長となりました。しかし、世帯の消費支出は連続の減少となり、実質賃金も低いレベルから改善されず、ワーキングプアという格差を固定化してしましました。コロナ禍にあっては、4月~6月のGDPは、年間換算28.1%減となり、コロナ倒産は500件、コロナ解雇は5万人を超えるなど政治は無力化しています。この安倍政治を引き継ぐと宣言した菅政権に未来を託すことはできません。

 一方で野党は、9月10日に立憲民主党と国民民主党が新党を立ち上げ立憲民主党としてスタートを切り、枝野幸男氏が新党の代表に選出され政権交代への決意を述べました。

 解散総選挙も近いと言われています。国鉄労働組合は、反戦・平和・護憲・民主主義を擁護する立場で、取り組みを強化します。国民本位の政治を取り戻すために全力をあげましょう。

 以上4点の中心的な課題について述べましたが、課題は山積しています。難局を乗り越え国労運動を継承していくためにも、職場からの運動を強化し、組織拡大の取り組みに全力を挙げる決意を申し上げて中央執行委員会を代表してのご挨拶といたします。