コロナ危機を乗り越え、働く者の生命と健康を守り、平和と民主主義を取り戻す特別決議
中国を由来とする新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るい、国内感染数が8万人に迫り、死者数も1400人を超えている。利益・効率化を最優先に、「民営化」「規制緩和」「自己責任」を推し進めてきた『新自由主義』の誤りが浮き彫りとなったなかで、医療や公共サービスの切り捨てや労働法制の改悪によって、労働者・国民の「生命・生活・雇用」が脅かされ、未曽有の危機に直面している。
政府は、「アベノミクス」政策において、「景気は回復傾向」と繰り返していたが、その実態は、大企業が内部留保をため込み、労働者の実質賃金は下がり続け、家計の消費支出の落ち込みと同時に貧困と格差を拡大させている。コロナ対策の不手際も相まって、安心を求める声に説明責任を果たさず、森友・加計問題に続く桜を見る会への疑惑追及などを背景に臨時国会を招集しなかった政府の姿勢は「国権の最高機関」とはいえず、「主権者」を軽視した許しがたい態度である。
私たち公共輸送機関や医療現場などで働く仲間たちは、国民の生命と財産を守るため、もとより社会を支える必要不可欠な仕事に従事し『エッセンシャル・ワーカー』と呼ばれている。しかし、政府・財界はそれに相応しい処遇はおろか、コロナ禍の経済危機に便乗したコスト削減に名を借りた「合理化」攻撃や労働法制の規制緩和の策動を強めている。
国鉄労働組合は、様々な闘いや鉄道事故を通じて教訓として学んだ命の大切さに正面から向き合い、団結の力で「安全第一の企業風土」の構築と、働く者の雇用と権利、命と健康を守り抜くため全力で奮闘する。
今年8月15日、75年目の節目となる『終戦の日』を迎えた。
自身の持病悪化を理由に辞任を表明した安倍前首相は、今年の全国戦没者追悼式の式辞で、毎年盛り込んでいた「歴史と向き合う」表現を削り、「積極的平和主義」という言葉を新たに加えた。これは、これまで政府が推し進めてきた日米の軍事一体化や、自衛隊の海外派兵を「正当化」するために用いてきた言葉であり、戦禍で犠牲となった人々を悼む姿勢ではない。コロナ禍で国民が苦しめられているのは、医療・検査体制の強化が進まず、補償のない休業要請など安倍政権の失政によるものであり、いま急ぐべきは改憲ではなく、実効性のある感染拡大防止対策と暮らしと経済を立て直し、憲法を守り生かしていくことである。 安倍前首相が、後継政権下での改憲に期待を示し、そ
の理念を引き継ぐとしている菅首相が誕生したもとでも、「市民と野党の共闘」の流れを確実に前へ進め、憲法改悪を許さない世論を大きくし、国民の力で阻止することが重要である。
また、唯一の戦争被爆国である日本政府は、核兵器禁止条約を拒む姿勢を変えていない。更に広島への原爆投下直後に降った『黒い雨』の被害をめぐる原告全員勝訴の地裁判決も受け入れず控訴した。被爆者の苦難に寄り添わず、悲痛な声に背を向ける政府に断固抗議する。
国鉄労働組合は終戦の翌年、「二度と戦争協力をしない」と誓い、結成した組織であり、反戦・平和の旗を高く掲げ、今日まで闘い続けてきた。平和と民主主義の後退を許さず、国民・労働者と共に、共同・ 共闘の闘いを一層強化していく。
右、決議する。
2020年9月18日 国鉄労働組合 第89回定期全国大会