第90回定期全国大会にご参集いただいた仲間の皆さん、大変ご苦労さまです。中央執行委員長の松川です。中央執行委員会を代表して一言ご挨拶申し上げます。

 1986年10月の第50回臨時全国大会、あの修善寺大会から40回を数える大会を迎えました。当時の権力側の目的であった「国労潰し」を跳ね返し、今日まで歴史を刻むことができました。これもひとえに、職場で差別に耐え、組織と仲間を信じ頑張ってくれた組合員のおかげです。指導してくださった各級機関役員の皆さまと全国の組合員に対しあらためて感謝を申し上げます。そして本日も、コロナ禍と厳しい組織現状の中で、修善寺大会と同じく、大会準備地本を担っていただいている東京地本の鎌田委員長をはじめとする執行部の皆さまにも感謝申し上げます。

 あれから35年の歳月が流れ、組織の現状は本部が示した5年ビジョンにもある通り、大変厳しい現実にあり、楽観視できる状況ではありません。したがって、組織の存亡をかけた組織強化・拡大運動を展開しなければいけませんし、様々な場面を想定した組織体制を整備・確立することも我々に課せられた課題です。

 昨年来、世界中を苦しめているコロナウイルスにより、思うように活動することができず、集まること、人と会うことなどが避けられる日々が1年半にもなっています。世界の感染者は、2億人に迫る勢いであり、日本においても変異株の急増や国の対応のまずさから、東京都には4回目の緊急事態宣言が出され、沖縄県も継続となりました。

 このような現状において、JR各社や航空、バス、ハイタク、観光など交運労協に集う企業は、人流を止めることが求められた結果として、最悪の経営状況になっています。各企業で固定費の削減が行われ、出向や休職なども実施されており、労働組合は組合員の生活と雇用を守ることに全力を挙げているのが現状です。

 私たちを取り巻く情勢は、コロナ禍によって誰もが経験したことのない環境に置かれ、「今後の働き方や生活が変わる」との懸念もありますが、私たちは国労運動を着実に進めていかなければなりません。

 そのための第一の課題は、組織強化・拡大の取り組みです。

 国労運動を継承し発展させるためには、組織拡大するしか選択肢はありませんが、コロナ禍で組織拡大運動が思うようにいかない中でも、直近では6月に広島、7月には東京・神奈川地区本部で3名が同時加入という、うれしい報告をいただき、昨年の大会以降9名の拡大になりました。

 さらに取り組みを進めるために、闘争指令第1号の総括運動を今年の中央委員会で提起し、最重要課題の総括を全機関で行ってきました。2012年に発出した組織拡大運動は、8年が経過し、拡大数は300人に迫ってきました。この拡大という直接的な成果と併せて、全国どこに行っても拡大運動が取り組まれている、まさに全国統一闘争としての運動の前進と組織の集中を得たことがもう一方の大きな成果です。

 国労全機関での総括をエリア本部がとりまとめ、6月18日に招集した第3回組織拡大全国統一行動対策会議において総括議論を行い、全国の学ぶべき取り組みが報告されました。

 各エリアの総括を踏まえた国労としての総括については、さらに大会討論で肉付けをしていただき、大会終了後に対策会議を招集しあらためて今年度の取り組みを提起したいと思います。

 第二の課題は、5年ビジョンの経過についてです。

 5年ビジョンは財政、組織、運動の観点から提起してきました。財政については、スト基金を活用して順調に2年が経過し、コロナ禍による活動自粛などもあり、支出が削減されたことにより想定以上の剰余も生み出すことができています。ただ、組合員の減少による組合費収入の減収は避けられないため、危機感を持つことが必要です。

 一方、運動面の次世代育成と運動継承については、各級機関で実践していただいており、本日もJR採用の仲間が代議員として参加してくれていますのでさらに取り組みを進めてまいりたい。

 また、組織については、組合員の推移に基づき考えていく必要があります。5年後10年後の組織の推移を想定し組織をどうするのか、組織検討委員会でも議論していただいておりますが、更に検討を重ねたいと思います。本日は、現状に合わせて議論していただいた全国組検答申に基づく規約等の一部改正も議題として提出しておりますので、承認を願いたいと思います。来年の大会では、5年ビジョンの中間総括を行い、出口とその先も見つめたいと思います。

 第三の課題は、JRの健全経営と安全・安定輸送を確立する取り組みです。

 コロナの影響が1年半にも及び、会社の運営や労働にも大きな変化がありました。人流が止まったことにより、貨物を含むJR7社の営業収益は、3兆4千億円の減収、純利益は、1兆8千億円の減収となりました。

 新賃金で見てみると、コロナ前5年平均で587円の賃上げ。昨年まではベア回答がありましたが、今年はゼロ回答です。夏季手当では、コロナ前5年平均では2.4箇月ですが、今年は1.62箇月と0.8箇月減となりました。

 会社は当然のように固定費である、人件費をカットしてきましたが、私たちにとっては、生活にかかわる大きな話であり、許せるものではありません。年末手当、2022年春闘では、生活を維持・改善するための回答を求めたいと思います。

 同時に、JRの経営、及び安全・安定輸送に関する政治への働き掛けも重要です。本部は、春闘期の政党要請と秋季の省庁要請を取り組んできましたが、本年3月に参議院でJR北海道・四国・貨物に対する支援策の継続・拡充が盛り込まれた「日本国有鉄道清算事業団債務処理法改正案」が成立し、総額2,465億円の支援策と当該各社に人材確保や育成、賃金や労働条件の改善など5項目を当該3社に求めた付帯決議も採択されました。経営を安定させ安全・安定輸送を確立するためには、必要不可欠の課題であり大きな成果です。主体的に取り組んでいただいた野党各党の皆さまには感謝を申し上げます。

 三菱電機の鉄道用空調装置などを巡る偽装問題が指摘され、大きな問題になっています。三菱電機のみならず、大手自動車や建設関連などでも偽装問題が発覚し日本のモノづくりに対する不信が広まっています。今回JR側は、被害者の立場ですが、コロナ禍以降のコストダウンや効率化施策により安全が損なわれる等で被害者から加害者にならないように自らを戒めることが必要です。

 その際に会社側の姿勢を正し、改善を求めることができるのは、労働組合であることを明らかにし、国労への結集を呼び掛けることが重要です。JR各社では、エリアや地方単位で経営協議会や団体交渉など議論できる場が設定されているので、組合員を守り、安全・安定輸送を築いていくための取り組みを強化していきたい。

 第四の課題は、政治に関わる課題です。

 昨年9月に安倍政権を引き継いだ菅政権は、初めて臨んだ通常国会で、コロナやオリンピック対応などをさらに議論すべきとの野党からの国会延長要求に応じることなく国会を閉じました。相次ぐ「政治と金の問題」やコロナ対策のまずさ、曖昧なオリンピック対応などで野党からの追及をかわす狙いが透けて見えます。

 菅政権下では、コロナ感染拡大を止めることができず、緊急事態宣言とまん延防止等重点措置の繰り返しで、東京都においては独自規制などもあり、今年になって制限がかかっていない日は一日もない状態で、長引く不便な生活を強いられています。そして、7/8に4度目となる緊急事態宣言を判断した菅首相は「東京を起点とする感染拡大を起こすことは絶対に避けたい」と考え方を述べましたが、その一方で、「オリンピック」開催にはこだわり続けました。 

 国民の暮らしを制限し、世界的イベントを開催する判断は、火消し役を都民に押し付け、政治は油を注ぐことに他ならず、国民感情を無視した政治対応と言わざるを得ません。このような対応の陰でコロナ倒産は1,700件を超え、コロナ関連解雇者も10万人を超えています。 

 また、相次ぐ菅側近と言われる閣僚の「政治と金」問題による不祥事・辞職が連続し、身内が務める通信関連業者の接待問題など相次ぐスキャンダルにまみれています。 

 結果として、4月の衆参3選挙や千葉・静岡県知事選、東京都議会選挙においても自民党は惨敗する結果となっています。 

 この菅政権に未来を託すことはできません。オリ・パラ終了後に行われる総選挙においては、国民の為の政権を確立するためにも、国鉄労働組合は、反戦・平和・護憲・民主主義を擁護する立場で、取り組みを強化します。

 以上4点の中心的な課題について述べましたが、難局を乗り越え国労運動を継承していくためにも、職場からの運動を強化し、組織拡大の取り組みに全力を挙げる事を強く訴え、第90回全国大会の成功と国労の総団結を目指す決意を申し上げて中央執行委員会を代表してのご挨拶といたします。