国鉄労働組合は7月28日~29日、新橋交通ビルにおいて第91回定期全国大会を開催し、急速に拡がっている第7波の新型コロナウイルスの感染予防対策としてリモートを活用しながら、この1年間の闘いの総括とJRの労働条件改善、安全・安定輸送の確立、JR及びグループ会社を含む非正規労働者の正社員化と処遇改善、憲法改悪反対、原発再稼働反対、辺野古新基地建設反対、2023年春闘の勝利をはじめとしたあらゆる闘いを組織強化・拡大に集約しながら全力で闘い抜くため、向こう1年間の運動方針を確立した。

 第90回定期全国大会では「闘争指令第一号」の総括を行い、さらには全職場から具体的目標に基づき取り組みを展開しながら、各エリア・地方の努力の下、多くの組織拡大を実現することができた。これらの教訓に基づき「5年ビジョン」の中間総括では、これまで国労が培ってきた「運動・組織・財政」を次世代の仲間への継承とさらなる運動の発展に向け国労組織一丸となり取り組むことを確認した。

 昨年10月4日に発足した岸田内閣は、自民党の党是である「憲法改正」を重要課題として位置付け、第49回衆議院議員選挙以降、改憲勢力の後押しにより改憲に向けた動きを更に活発化させている。

 一方で今年2月24日のロシアによるウクライナへの軍事侵攻の開始以降、多くの民間人が犠牲となり世界中からロシア軍の即時撤退と平和的解決が求められるなか、自民党や日本維新の会など一部野党は「核武装なしに日本は守れない」として米国と核を共有する『核シェアリング』など非核三原則を見直すべきとの主張にまで踏み込んできている。これらの主張は憲法九条に反するばかりか、唯一の被爆国である日本国民として断じて認められるものではない。

 7月10日に投開票された第二六回参議院議員選挙は、自民党が改選議席の過半数を獲得し衆参両院ともに改憲勢力は3分の2を上回る結果となったが、憲法改正論議に一層の拍車がかかることは必至である。

 沖縄では、辺野古新基地建設の埋め立て工事が強行されてきたが、参院選では自民党が新基地建設「容認」の姿勢を初めて明確に打ち出したなかで「オール沖縄」推薦の伊波洋一氏が僅差で当選した。九月に沖縄県知事選が実施予定であることから改めて沖縄県民の民意に寄り添いながら、基地建設反対の取り組みに全力をあげなければならない。

 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から11年が経過した。被災地では住宅は再建されても多くの住民は帰還できず、依然として避難生活を余儀なくされている。人口減少と高齢化が追い打ちをかけ地域社会の切迫した課題は放置されたままである。それにも関わらず福島第一原発事故の被災者支援である住宅提供などの打ち切りが進められている。加えて国と東電は2年後には汚染水の海洋放出を強行しようとしており、避難者の補償問題や風評被害などへ対応を含めて原発再稼働阻止、再生可能エネルギーへの政策転換と脱原発社会の実現を強く求めていかなければならない。

 他方、JR各社の2021年度決算は、昨年度決算から大幅に改善はされたものの、JR九州と貨物会社を除き、いずれも赤字を計上する結果となった。22春闘では各社とも定期昇給は実施されたが期末手当は昨年度に続き低額回答が示される結果となり、生活に困窮する組合員・家族からは不満と怒りの声があがっている。同時にJR各社はコロナ禍による経営収支を背景に急速に要員削減と効率化を相次いで提案し、グループ会社への委託化やシステムによる無人化により人件費の削減とマルチタスク(多能工化)を推し進めているが、グループ会社においても労働条件の悪化が進行しているなかで、契約社員の労働条件改善や雇い止めの解消や正社員化の実現は喫緊の課題となっている。いまこそ「同一労働・同一賃金」に基づく賃金の底上げにより真の働き方改革の実現と格差是正に向け、全力をあげなければならない。

 JR職場では国鉄世代が大量退職により急激な世代交代が余儀なくされて鉄道の安全輸送への課題は山積している。福知山線及び羽越本線での脱線事故から17年目を迎えた現在も事故の教訓は生かされないままJR各社とも重大なインシデントやトラブルは後を絶たない。また、地方交通線の維持・存続はJR各社からJR路線別の収支や輸送人員が公表され、国土交通省も『鉄道事業者と地域の協働による地域モビリティの刷新に関する検討会』を設置し、議論を重ねてきたが、7月25日にはローカル鉄道の在り方に関する提言を発表した。地域公共交通を「どのように守っていくのか」は全国的にも大きな課題であり、利用者や地域の視点に立ち、全ての交通・運輸労働者との共闘や連帯を深め、「誰もが安心・安全に利用できる働き続けられる職場づくり」の取り組みが重要になっている。またJR北海道・四国・貨物の経営基盤の強化とJR会社発足当時から抱える構造矛盾の抜本的な解決に向けた取り組みも強めなければならない。

 これらの山積する諸課題のなかで、全国で築き上げてきた組織拡大の条件を結実させるべく、不退転の決意で組織拡大に取り組むことが求められている。結成から76年が経過し、将来を担う次世代の仲間がこれまで築き上げてきた職場での労働条件改善や待遇改善に向けた日常不断の地道な運動の積み重ねを継承し、さらに国労運動の礎とするため、全職場・全機関が総力を上げて奮闘することを誓い合うものである。

 右、宣言する。 

2022年7月29日 国鉄労働組合 第91回定期全国大会