第92回定期全国大会にご参集いただきました、構成員、傍聴者及び、関係する仲間の皆さん、大変ご苦労さまです。また、大変お忙しい中ではありますが、激励に駆けつけていただきました来賓の皆さまには、国労を代表して感謝を申し上げます。そして酷暑の中、コロナウイルス感染拡大が懸念される中、日夜鉄路を守り、国労運動を職場・地域から展開していただいている全国の組合員に対し敬意を表します。

 新型コロナウイルス感染症は、本年5月に取り扱いが変更になり、精神的な負担も少し軽くなりましたが、依然として油断はできず、引き続く再拡大への懸念や勤務調整が厳しい中、今大会も鎌田委員長を先頭に東京地本に準備地本として任務についてもらっていることに感謝申し上げます。中央執行委員長の松川です。中央執行委員会を代表して一言ご挨拶申し上げます。

 国労が長い間お世話になった、宮里先生が本年2月5日にご逝去されました。心からお悔やみ申し上げます。JR不採用問題が激論になり大会が騒然としていたとき、弁護団報告に立った先生から「団結なくして解決なし」「団結なくして勝利なし」と何度も言われたことを鮮明に覚えています。労働組合に取って「団結」がどれほど大切かを宮里先生から教えていただきました。後日、国労として偲ぶ集いを計画したいと考えていますので、あらためてご案内いたします。

 ロシアが昨年2月にウクライナへ軍事侵攻し、今この時にも何の罪もない人々の命が奪われ、兵士が傷つき殺されています。全てが尊い人間の命であることは言うまでもありません。

 国の権力者同士が領土と利権を奪い合うために行う、戦争という名の殺し合いは、国労としていかなる理由があろうとも認めることはできません。一日も早い停戦と平和解決を望むものです。

 そのような中で、岸田政権は今まで政府が封じてきた国債による軍事費調達に踏込み、増税をも視野に置いて軍事力を増強しようとしています。さらに自民、公明両党は「殺傷能力のある武器を輸出することは可能」との意見をとりまとめ、これまでの政府見解を覆そうとしていると報道されました。戦争法と言われた安保法制の制定以降、歴史を巻き戻し「戦争をする国」へと突き進んでいます。「戦争とは何か」「戦争で犠牲になるのは誰か」をもう一度考え、国労は戦争を認めることはできないことを明らかにし、良識ある野党と国民と共に闘いを構築したいと思います。

 さて、今大会の大きな課題は、ローカル線を含めた総合交通体系と地域活性化、住民の生活をどう守っていくのかということです。JR各社は、コロナ感染症を機に経営問題としてローカル線を捉えていますが、国会では法整備が行われ、ローカル線は事業者の経営判断で廃線の議論を俎上にのせることができるようになりました。国鉄改革の際に、「ローカル線はなくならない」と喧伝し、国鉄「分割・民営」化を強行した自民党にも責任があり、ローカル線については、地域公共交通として存続していただきたいと思います。国鉄改革から36年が経過し、第2幕が始まるような動きに警戒心を持たなければいけません。

 そのためにも国労の取り組みが重要ですが、実行するための組織作りが必要です。

 第1の課題は、組織強化・拡大についてです。

 昨年度は、「各機関1名、全国で50名の拡大を目指す」ことを確認し取り組みを強化してきました。その結果、組合員の減少やコロナ禍で組織拡大運動が思うようにいかない中でも、東京、近畿、広島、九州において拡大を果たしていただきました。組織が厳しくなっても、拡大する気持ちをもって行動すれば実現できることを実証してくれました。特に組織現状が厳しい九州エリア本部において、複数の拡大を果たしていただきました。目標を達成した全機関に感謝申し上げると共に、職場において拡大のために日夜奮闘している組合員の皆さんや、拡大の数字にはならなくても取り組みを強化していただいている全機関の努力に感謝を申し上げ、お互いが学び合って運動を進めていきたいと思います。

 一方、組織の現状は、多くの退職者を抱え大変厳しい現実であり、現状を打破するためには組織拡大しかありません。JR東日本においては組合加入率が2割を切っており、改めて労働組合の必要性を訴え、加入を求めていかなければなりません。国労運動を継承し、発展させていくためにも組織強化・拡大に向けて全力をあげていくことを確認したいと思います。

 第2の課題は、労働条件改善、JRの安全・安定輸送を確立する取り組みです。

 コロナの影響が大きく響き、JR各社は厳しい経営を余儀なくされてきましたが、この間にローカル線問題が大きくクローズアップされてきました。

 昨年、国交省の有識者検討会が提言を出して以降、政府は、2月に「地域公共交通活性化再生法(地活法)」の改正案を閣議決定し、本年4月に参議院本会議において可決成立させました。赤字を抱える事業者が国に対策を求めることができるので、廃線を含むバス転換などの色合いが濃くなってくると思われます。すでに北海道では、並行在来線となる函館~長万部間約150㎞は経営分離されますが、関係自治体は財政負担から「廃線やむなし」の意見が強いとされています。しかしこの区間は、JR貨物の物資輸送の大動脈であり、一日約40本の貨物列車が行き来して都心の生活を支えています。さらに、北海道から東北にかけての第3セクター鉄道会社は、JR貨物から受け取る線路使用料を前提に経営しているため、経営問題に発展しかねない状況です。

 ローカル線の廃止に歯止めをかけて、維持・活性化させていく方向で国労としても政府機関や関係自治体等に対する要請行動を強めていきたいと思います。

 明日の会館労働講座において国土交通委員の野党筆頭理事である森屋隆参議院議員にお越しいただいて、ローカル線の問題や法案の解説をしていただくことになっています。ローカル線が危機的状況にある現実を踏まえて学び合い、国や政党への要請を強めてまいりたいと思います。

 さらには、コロナ禍で赤字を経験したJR各社は、経営のスリム化を一気に進め、新たな体制を築こうとしています。しかし、行き過ぎた体制変更や会社施策が散見されることから、現場目線で改善に臨みたいと思います。

 そして春闘ですが、2023年春闘では、全エリア本部で要求を提出し、ベアの有額回答を引き出すことができました。また、グループ会社においても、同様の回答を得ることができました。要求額には届かなかったものの、奮闘してくれた各エリアの取り組みと組合員に感謝申し上げ、成果として受け止めたいと思います。引き続き生活改善に向けて来春闘の取り組みを強化したいと思います。

 第3の課題は、5年ビジョンについてです。

 今年度が5年ビジョンの最終年度となりますが、この5年間でスト基金を活用して財政基盤を確立し、組織拡大に打って出ようと訴えてきました。この結果がどうであったのかが問われています。本部はもとより国労全機関で考えていかなければならない課題です。

 組織現状は、退職者の増加に伴う組合員の減少に歯止めがかかっておらず、組織のあり方にも直結する課題として受け止めています。次代を担う、次世代の育成と併せて、組織と運動のあり方について率直に議論したいと思います。

 第4の課題は、政治課題についてです。

 今年5月に開催されたG7を議長国として迎えた岸田首相は、あえて広島を選びました。しかし、平和の象徴である広島の地で、「国際秩序の回復と平和で核兵器のない世界を目指す」とした一方で、ウクライナへの軍事支援として武器提供も確認されたなど、軍事力により戦争を優位に進める道が選択されました。

 岸田政権は、日本の将来を形作る少子化対策は言葉ばかりのバラマキ政策にすぎず、防衛費は敵基地攻撃能力保有を想定した軍備拡張のため、増税を視野に財源を確保する構えです。しかし、軍事力を増強すればするほど戦争に近づき、国民を犠牲にする結果になることをウクライナの現状から学ぶべきです。

 さらに、原発を巡る動きでは、原油価格の高騰やエネルギー確保を理由に原発回帰を鮮明にしてきました。この安易な方針転換を許すことはできませんし、汚染水の海洋放出も納得する責任説明が必要です。

 国労は昨年第10回目となるになるフクシマ交流を成功させ、反原発の取り組みを地域の仲間と共に取り組んできました。この10年間で人類と核の共存、核の平和利用はあり得ないことを次世代の仲間と共に確認してきました。平和に対する取り組みを実践する場として、フクシマ交流を今年も開催する方向で検討します。

 最後に共済運動について触れておきます。

 交運共済は、本年7月からこくみん共済コープへ契約移転しました。短期間での諸手続きについて、献身的に取り組まれたことに感謝申し上げます。

 契約移転につきましては順調に進んでいますが、積み残しもあります。8月末までが最終期限ですので、契約者保護の観点から最後までのご協力をお願いします。国労は、鉄関労の構成組織として、こくみん共済を利用することになりましたが、掛け金収受や諸手続きなどの事務作業は、今後鉄関労で行っていきますので何かあれば鉄関労共済対策部まで問い合わせをしていただきたいと思います。

 また、総合共済については、引き続き交運共済で行いますのでこちらもよろしくお願いします。

 以上5点の中心的な課題について述べましたが、難局を乗り越え国労運動を継承していくためにも、職場に根差した運動の展開から、組織拡大の取り組みに全力を挙げる事をあらためて強く訴え、第92回全国大会の成功と国労の総団結を目指す決意を申し上げて中央執行委員会を代表してのご挨拶といたします。 

以上