第94回定期全国大会にご参集いただきました、構成員、傍聴者及び、関係する仲間の皆さん、大変ご苦労さまです。
また、大変お忙しい中ではありますが、激励に駆けつけていただきました交運労協・池之谷議長、平和フォーラム・田中副事務局長、全労協・渡辺議長、そして国民の声を国会に届けてくださっている立憲民主党・阿久津幸彦衆議院議員、社民党・福島みずほ党首、日本共産党・大門実紀史参議院議員にも駆け付けていただきました。
先日の参議院議員選挙において、与党を過半数割れに追い込み、新たな局面を迎えて何かと忙しい中でご臨席賜りました来賓の皆さまに国労を代表して心から感謝を申し上げたいと思います。
そして連日続く酷暑の中で日夜鉄路を守り、国労運動を職場・地域から展開していただいている全国の組合員に対し敬意を表します。さらに、厳しい条件が重なる中で、今大会も準備地本として鎌田委員長を先頭に任務についてもらっております、東京地本の皆さんに感謝申し上げます。
中央執行委員長の松川です。中央執行委員会を代表して一言ご挨拶申し上げます。
今年は、戦後80年、被爆80年の年に当たります。8月6日広島、9日長崎に1発の原爆が投下され21万人を超える多くの尊い命が一瞬にして奪われました。あの忌まわしい戦争を二度と起こしてはいけないと世界は誓ったはずです。しかし近年は地域紛争のみならず、大国が前面に出て、あろうことか核の脅威をちらつかせ自国の主張を正当化しています。戦後にして、本当に核のボタンが押されるのではないかとの不安が世界で渦巻いています。
世界で唯一の被爆国である日本が、この危機的状況を打開するために外交努力をしなければいけませんが、残念ながら米国の「核の傘」に収まり、「戦争のできる国からする国」へと変貌しようとしています。
自民党政権では国民を守ることはできません。国労はいかなる戦争も認めることはできないことを明らかにし、今日ご臨席賜りました政党の皆さまと平和な国を構築していきたいと思います。
さて、今大会の第一の課題は、労働組合の生命線である組織強化・拡大についてです。
昨年度も9月に組織拡大対策会議を立ち上げ、具体的な目標を定め取り組みを強化してきました。結果として、組合員が減少する厳しい組織現状ではありますが、二桁の拡大を果たしていただきました。拡大が続いている事実に自信と確信を持つことが必要です。組織拡大の芽は、いたるところにあると思います。それに気付くための取り組みと拡大するための運動を今年度も構築していくこととします。
一方で組織の現状は、多くの退職者を抱え大変厳しいのが現実で、今後の組織のあり方を引き続き議論しなければいけません。簡単に結論を導き出すことはできないので、特に次代を担う世代の声を聞かせてほしいと思います。今後の組織を作っていくのは、次世代の皆さんです。歴史や先輩の言葉に迷うこともあるかもしれませんが、次世代が中心となってより良い組織にしてほしいと思います。
第二の課題は、労働条件改善、JRの安全・安定輸送を確立する取り組みです。
JR発足38年が経過し、40年が目前に迫っています。この月日の中で、JR各社は鉄道業から、非鉄道業へと資本をシフトしてきました。生産年齢人口の減少に伴い、鉄道だけでは利益が上がらないことから、「儲かる事業へシフトする」と経営陣は公言しています。民間会社の経営としては当たり前のようにも聞こえますが、それは鉄道の安全が担保されていることが大前提であり、さらに国鉄から引き継いだ公共交通の使命を果たすこと抜きには語れないと思います。
どれだけ素晴らしい商品を紹介し、素敵なホテルを提供したとしても、鉄道事故を起してしまえば、すべての信頼を失うことをJR各社はすでに経験しています。事故がなぜ起きたのかを振り返り、常に安全が追求されなければいけません。
残念ながら昨年来、新幹線に関する事故が多発しています。走行中に連結器が外れる事故が2度も発生。山形新幹線は、原因不明で運行に大きな影響。その他にも架線、パンタグラフ、ブレーキトラブル。そして在来線でも、事故は多発。さらにグループ会社、協力会社社員の死亡事故などJR各社では事故が頻発しています。このままでは、本当に人命が絡む大事故が起きるのではないかと危惧してしまいます。
福知山線脱線事故、特急いなほ転覆事故から20年の節目を迎えて、二度とあのような事故を起さないための取り組みをあらためて労使で作っていかなければなりません。
その意味において、労働組合の役割は大切ですが、日本の労働組合加入率は、16.1%で過去最低を更新しました。しかし、一部のJR会社においては、その数値をも下回る加入率となっており、他のJR各社と比べても異常な環境であり、首都圏や新幹線輸送を担っている鉄道会社としては異質です。
オープンショップ制ですから労組加入は自由ですが、新入社員の加入率がほぼ100%だったものが、ある年から0%になっています。異常な事態です。
国労としても、会社内を正常な状態に戻して、事故の芽を摘み取り、安全・安定輸送を確立するための取り組みを強化したいと思います。
もう一つは、公共交通の使命についてです。民間会社として利潤を挙げる事は必要です。
しかし、その手法として儲からないとの理由で地方ローカル線を廃線に追い込むのは間違っています。その線区には、少ない数であっても利用者がいて、生活があり、命があります。その移動する権利を確保するのが公共交通ではないでしょうか。その使命をJR各社は国鉄から引き継いでおり、その使命を放棄するのは許されません。
本部は昨年シンポジウムも開催しましたが、JR発足40年を目前にして、もう一度公共交通の使命について考え合いたいと思います。
さらに、公共交通や人流・物流にかかわるものは国の責任も大きいことから、交運労協などと連携し行政への働き掛けを強化します。
第三の課題は、2026年春闘についてです。
昨年は、全エリア本部で有額回答を引き出すことができました。また多くのグループ会社においても、同様の成果を得ることができました。要求額には届かなかったものの、奮闘していただいた組合員に感謝申し上げます。
しかし、物価高において生活改善には程遠いのが現実です。昨年は24春闘に続き、政治からの賃上げ圧力があったのも事実です。失われた30年の中で、低賃金がゆえに国内消費が行き詰まり、経済成長がストップしました。国際社会についていけないほどの低賃金に抑え込んできたのは政治と企業経営陣です。
そのことを踏まえて、26年春闘では、立場の弱い労働者が団結しなければ要求は勝ち取れないという、労働組合の基本的な役割を再認識して、経済の為ではなく、労働者の生活向上のための賃上げを求めて2026年春闘に臨みたいと思います。
第四の課題は、政治的な課題についてです。
20日に投開票された第27回参議院議員選挙は、与党である自公両党が大敗し参議院全体の過半数に届かず、衆議院に続いて参議院でも少数与党となりました。これは既存の政治に対する民意が示されたもので、数々の自公政権が進めてきた政策が変更されなければいけません。減税もテーマとなっていましたが、軍事費などの無駄な予算を見直すことも必要です。
冒頭でも述べましたが、世界各地で核保有国が絡んだ軍事衝突が起こっており危険な状況です。現在でも、世界で12,000発超の核が保有され、直ちに軍事的に発射できる核弾頭が約4,000発、今この時も、運用状態で配備されています。この核の数は、人類を破滅させても余るほどの数であることは言うまでもありません。
だから日本も軍事力を強化して日本を守る、敵基地をも攻撃できるとしています。しかし、軍事力増強は敵対意識を煽り、国民を危機にさらすだけであることは、世界の現実からも明らかです。
ロシアとウクライナ、中東各地で国同士が自国の主張を正当化するために軍事行動に出ていますが、戦争から何を得ようとしているのでしょうか。そのために犠牲になっているのは、民間人・軍人を含む国民であることを正しい目で見る必要があります。
国労は被爆80年視察学習交流会を長崎で開催し、二度とあのような日を迎えないために、事実を語り継ぎ、取り組みを強化することを誓いました。暑い夏を迎え、8月に広島と長崎において53回目となる国鉄原爆死没者慰霊式典を執り行います。国労は、恒久平和を願う立場から軍事大国化の道に明確に反対します。
もう一つは、原発を巡る状況です。原発事故の反省から原発依存を下げてきましたが、ついに石破政権でエネルギー政策の抜本的見直しが行われ、原発回帰の立場を鮮明にしました。もう福島第一原発事故は、喉元を過ぎたのでしょうか。14年間で事故のリスクはなくなったのでしょうか。私たちは、この安易な方針転換を許すことはできません。
国労は昨年、第12回目となるフクシマ交流を取り組み、核の平和利用などあり得ないことを改めて確認しました。福島第一原発事故を風化させず、反原発の取り組みを地域の仲間と共に取り組むためにも、フクシマ交流を今年度も開催したいと考えます。
最後に共済運動についてです。
こくみん共済コープへの契約移転から始まり、総合共済の改訂に向けた諸課題に対する手続きなど、組合員及び担当役員の皆さまにはご苦労をおかけしましたが、なんとかここまでたどり着くことができました。30日に交運共済は通常総代会を迎えますが、引き続き、組合員のご理解とご協力をこの場を借りてお願い致します。
以上、中心的な課題について述べましたが、これから先、国労運動を継承し、組織を作っていくのは次世代の仲間です。そして知恵を出し、次世代を激励しながら共に闘うのが国鉄世代の役目です。
仲間を増やし、本大会で確認する方針を実践するために、全ての闘いを組織拡大に集約し、全力を挙げる事をあらためて強く訴え、中央執行委員会を代表してのご挨拶といたします。
以上